LaTeX Beamer で発表スライドを作る
はじめに
学会発表やセミナーのスライドを、本文の PDF と同じ品質(数式・コード・図版)で作りたいなら、LaTeX の Beamer クラスが使えます。組版の設定(latexmk や コンテナ)はそのまま流用でき、スライドも latexmk slides.tex で組めます。
最小の例
\documentclass[aspectratio=169]{beamer}
\usetheme{default}
\title{発表タイトル}
\author{田中 太郎}
\institute{コレクトコネクト}
\date{2026-09-09}
\begin{document}
\begin{frame}
\titlepage
\end{frame}
\begin{frame}{目次}
\tableofcontents
\end{frame}
\section{背景}
\begin{frame}{背景}
\begin{itemize}
\item 箇条書きは itemize
\item 数式もそのまま:\( E = mc^2 \)
\end{itemize}
\end{frame}
\end{document}
- 1 枚のスライド =
frame環境。{ }の中がスライドのタイトル aspectratio=169で 16:9。省略すると 4:3\sectionを置くと\tableofcontentsに自動で載る
フレームの書き方
- タイトルは
\begin{frame}{タイトル}{サブタイトル}のように 2 つ目の引数でサブタイトルも付けられる - コードや
verbatimを貼るフレームには[fragile]オプションが必要:\begin{frame}[fragile]{...} - 内容が 1 枚に収まらないときは
[allowframebreaks]で自動分割
テーマ
見た目は 3 系統のコマンドで切り替えます。
\usetheme{Madrid} % 全体レイアウト
\usecolortheme{seahorse} % 配色
\usefonttheme{serif} % フォント
装飾の多いテーマ(Madrid など)はヘッダー・フッター・ナビゲーションで情報量が増えます。内容に集中させたいなら、シンプルな default や、別途導入する metropolis テーマが扱いやすいです。ナビゲーション記号は次で消せます。
\setbeamertemplate{navigation symbols}{}
オーバーレイ(段階表示)
Beamer の特徴は、1 枚のフレームを何段階かに分けて見せられることです。
\begin{frame}{段階表示}
\begin{itemize}
\item<1-> 最初から表示
\item<2-> 2 段階目で出る
\item<3-> 3 段階目で出る
\end{itemize}
\pause
ここは pause の後に出る。
\only<2>{2 段階目だけ表示}
\alert<3>{3 段階目で強調(色が変わる)}
\end{frame}
<2->は「2 以降で表示」、<2>は「2 のときだけ」\pauseは簡易版。itemize[<+->]と書くと各項目が順に出る\only(場所も取らない)と\uncover(場所は取る)を使い分ける
段組み・図・コード
左右に分けるのは columns 環境です。
\begin{frame}{図と説明}
\begin{columns}
\begin{column}{0.5\textwidth}
\includegraphics[width=\linewidth]{fig.pdf}
\end{column}
\begin{column}{0.5\textwidth}
\begin{block}{ポイント}
右側に説明を置く。
\end{block}
\end{column}
\end{columns}
\end{frame}
block / exampleblock / alertblock は色付きの囲みです。ソースコードは listings(\usepackage{listings})や minted を [fragile] フレーム内で使います(minted は -shell-escape が必要)。図そのものを LaTeX で描くなら TikZ でグラフィカルモデルを描く・可換図式を描くの記事も参考になります。
和文スライド
日本語を含む場合、pdflatex では組めません。次のいずれかにします。
- LuaLaTeX +
luatexja:\documentclass[aspectratio=169]{beamer}に加えて\usepackage{luatexja}、フォントは\setmainjfontなどで指定 - upLaTeX +
dvipdfmx:\documentclass[dvipdfmx]{beamer}とドライバを明示
metropolis など欧文前提のテーマは、和文フォントの指定を別途足さないと明朝・ゴシックが当たりません。.latexmkrc をエンジンに合わせて設定しておけば、latexmk slides.tex で通ります。
配布用ハンドアウト
発表用(オーバーレイあり)とは別に、配布用の PDF を作ります。
% オーバーレイを畳んで 1 枚 1 状態にする
\documentclass[handout]{beamer}
さらに 1 ページに複数スライドを並べるには pgfpages を使います。
\usepackage{pgfpages}
\pgfpagesuselayout{4 on 1}[a4paper,landscape,border shrink=5mm]
発表者ノートは \note{...} で書き、\setbeameroption{show notes on second screen} で外部ディスプレイに出せます。ハンドアウト版は latexmk の別ターゲット(別ファイルや $pdflatex のオプション差し替え)にしておくと、1 コマンドで両方出せます。
関連記事
- latexmk — スライドとハンドアウトを 1 コマンドで組む
- TeX Live 入りコンテナと Makefile — スライドのビルド環境を固定する
- 確率的生成モデルのグラフィカル表現を TikZ で描く — スライドに載せる図を LaTeX で描く
- 圏論の可換図式を TikZ で描く — 同上、矢印中心の図
まとめ
- 1 スライド =
frame環境。コードを貼るなら[fragile]。 - 見た目は
\usetheme/\usecolortheme/\usefonttheme。情報を減らしたいならシンプルなテーマ+ナビ記号オフ。 <2->や\pause、\only/\uncoverで段階表示。段組みはcolumns。- 和文は LuaLaTeX+luatexja か upLaTeX+dvipdfmx。配布用は
handout+pgfpages。
本文の PDF で使っている組版環境をそのまま使えるので、数式やコードの多い発表ほど Beamer が向いています。